1: お酒を飲むと、体内では何が起こるのか?
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アルコールは、ヒトの体にとって「毒」のようなもの。少なくとも積極的に体内に入れるべきではないものです。そこで、これに対抗するため、体内ではアルコールデヒドロゲナーゼという酵素を生成。この酵素は、アルコールが胃壁をつたい、肝臓に達すると、アルコールに接触し、エタノール分子から水素原子を奪って、アセトアルデヒドにします。さらに、アルデヒドデヒドロゲナーゼを用いて、二日酔いの原因ともいわれるアセトアルデヒドを分解します(このテーマについては、ライフハッカーアーカイブ記事「二日酔いに関する迷信を解き明かし、本当に効く治療法をお教えします」で詳しくどうぞ)。
体内は「どれだけたくさんアルコールを摂取するか」と、「酵素がどれだけ速くこれに対処するか」とのせめぎあい。しかし、アルコールデヒドロゲナーゼ(AD)の効力や胃の状態、遺伝など、様々な要因によって、アルコールの吸収度合いやアルコールへの反応は様々です。
たとえば、アルコールデヒドロゲナーゼは、女性よりも男性のほうが効力があると見られています。若い男性は、アルコールに対して70~80%も強い酵素活動を持つ(英文)とか。ただし、年を取るにつれ、男性のアルコールデヒドロゲナーゼの効力は、女性に比べて55~60%も早く衰えるそうです。
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胃はアルコールの分解を手助けしますが、それは、アルコールと一緒に摂った食べ物がこれを吸ってくれているからではありません。たくさん食べると、小腸とのバルブ機能を持つ幽門括約筋が硬く閉じられ、胃で十分消化しようとします。このおかげで、胃にあるアルコールデヒドロゲナーゼが、じっくり時間をかけてアルコールに作用できるのです。一方、空腹の状態でアルコールを摂ると、すぐに小腸に流れ、体内に吸収されてしまいます。
アルコールの吸収や効果における大きな要因としては、遺伝もあります。お酒を飲むと顔が赤くなるといった「アルコールフラッシュ反応」(英文)は、アルデヒドデヒドロゲナーゼが変異するゆえに起こります。この分子が効果的にアセトアルデヒドと結びつき、これを分解できればよいのですが、分解されないアセトアルデヒドの量が多くなると、フラッシュ反応として、顔が赤くなったり、心臓がバクバクしたり、頭痛がしたり、極端な場合はひどい吐き気を催すというわけです。アルコールデヒドロゲナーゼやアルデヒドデヒドロゲナーゼの遺伝的な構造は、アルコールやその副産物を消化する力に影響を及ぼしています。
二日酔い防止策として、お酒を飲む前にアスピリンを摂るのは控えましょう。アスピリンはアルコールデヒドロゲナーゼ酵素の作用を妨げる(英文)からです。1990年の研究によると、お酒を飲む前に強力なアスピリンを2錠飲んだときの平均血中アルコール濃度は、アスピリンを摂らなかった人に比べて、26%も高かったとか。また、アセトアルデヒドがより多く残りやすいという研究結果もあります。
また「1時間に1杯くらいなら、しらふ同然」と思い込んでいる人は、米Lifehackerが紹介している、こちらの測定ツール(英語)やサントリーの自己診断ページなどで、実際に血中アルコール濃度をシミュレーション測定してみましょう。くれぐれも「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」を徹底してください。飲酒運転は犯罪です。
2: 飲酒と長寿に因果関係はあるのか?
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グラス一杯のワインは、寿命を延ばすと言われています。「Alcoholism: Clinical and Experimental Research」(英文)という研究では、当時55~65歳だった1824名の被験者を20年間追跡したところ、完全に禁酒した人のうち、69%が亡くなっていた一方、「ほどほどに飲む」人のうち死亡したのは41%。ヘビードリンカーだった人ですら、死亡の割合は61%と、禁酒していた人より死亡率は低かったそうです。
通説では、ワインに含まれる抗酸化物質やレスベラトロールが、HDL(善玉)コレステロールの値を上げると考えられています。
またJonah Lehrer氏は、米誌「Wired」の記事で、長寿とアルコールの関連性は直接的なものではないかもしれないが、おそらく何らかが存在するのだろうと指摘。この記事では、社会学者や疫学者は、孤独が長期間もたらす効果について研究を始めている、と紹介しています(詳しくは、こちらの英文PDFファイル参照)。ヒトはご存知のとおり、「社会的な動物」。極端に言えば、社会のネットワークから分断されると死んでしまうことすらあります。
現時点では、禁酒と社会的孤立との関係は単なる仮説に過ぎませんが、仲間とお酒を飲むという歴史を紐解いてみても、ほどほどに飲むことで、人間関係がより円滑に育まれ、これらの人間関係によって、ヒトは生きていけるのかもしれません。もちろん理論上は、他の飲み物であっても同一の効果は得られるでしょうが、アルコールが実際に持つ作用と社会的な表れがあいまって、長寿の効果につながっている可能性はあります。
3: アルコールは脳にどんな作用を及ぼすのか?
1993年、Grethe Jensen氏らのチームが行った研究では、アルコールとは関係ない死因で亡くなった、アルコール依存の人とそうでない人の脳を採取したところ、両者の間で、脳細胞の数や密度に大きな違いは見られなかったとか(この研究結果の詳細については、ブログメディア「Misconception Junction」の英文記事を参照のこと)。
実際、アルコールが脳に影響を与えているのは、グルタミン酸から神経が興奮を伝達する方法です。アルコールがシナプスのグルタミン酸受容体に浸透し、興奮を伝達する能力を阻害するのです。アルコールは、筋肉や会話、調和、判断などをつかさどる脳のすべてにわたって、この影響を及ぼします。「お酒の力を借りたほうが、ゴルフの調子がいい」と主張する人がいますが、この点について、『Buzz: The Science and Lore of Alcohol and Caffeine』では、アルコールにも、コカインやLSDの成分のように、脳の回路の機能を変える働きがあり、いわば「薬理学的な手榴弾」だと指摘しています。
ちなみに、数々の研究結果によって、シェイクスピアの格言「酒は興奮させるところもあれば、萎えさせるところもある」という点が裏づけられていますが、この現象も、脳とその他での神経の興奮の伝達に関係があるとか。ほどほどの酒量ならば、効果をもたらすこともありますが、アルコールは、体の特定の部分の解放に役立つわけではないそうです。
脳が記憶する方法については、まだ解明されていないこともたくさんありますが、『Buzz: The Science and Lore of Alcohol and Caffeine』の著者Braun氏によると、N -メチル- D -アスパラギン酸(NMDA)と何らかの関係があるとみられています。研究結果では、酩酊状態の間に起こった出来事は、通常、記憶しづらいものだそう。これはアルコール量の摂取量にもより、アルコール血中濃度は0.2%が上限ですが、記憶する部分とアルコールが独自に結びつくことによって、ぼんやり思い出せる程度のものから、完全なブラックアウトまでがありうるそうです。
4: 酔っ払いは「相手がわざとやった」と思い込みやすい?
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普段私たちは、人々の言動を「意図的なもの」と決め付けることを避け、あらゆる可能性や理由を考えます。しかし、アルコールによって、この冷静な思考が阻害されることがあるそうです。
「Personality and Social Psychology Bulletin」(※英文PDFファイル)で明らかになったある研究では、男性92名を対象に、絶食状態で3時間過ごした後、アルコールの入っていないジュースと、アルコールが入っているジュースのいずれかを飲ませました。ちなみに、飲ませる直前に、両方のグラスの縁にアルコールを吹きかけているので、被験者は自分のドリンクにアルコールが入っていると信じこんでいます。
30分後、被験者に「彼は電子メールを削除した」とか「彼女は鍵を探した」、「彼女は縄跳びにひっかかった」など、行動が意図的なものか、偶然なのか曖昧な行動に対して、それが意図的なものか、そうでないかを一つずつ判断させたところ、ほとんどの被験者は、明確な記述についてはアルコールの有無を問わず正しく判断したのですが、意図的なものかどうかはっきりしない行動に対しては、アルコール入りのドリンクを飲んだ被験者は、そうでない被験者に比べ、行動を意図的なものと判断する確率がはるかに高かったそうです。
5: お酒は睡眠に効く?
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「寝酒」という言葉があるように、長年、アルコールは睡眠を助けると考えられてきました。確かにある部分では正しいのですが、寝入ると、アルコールが脳に作用し、睡眠が途切れやすくなるという面が...。特に、就寝前にカフェインを一緒にとると、ほとんど眠れないという状態になります。
カフェインと同様、脳は受容体を妨害し、神経興奮を妨げるエタノール分子に反応。これによって、REM睡眠が害されることもあります。カフェインを摂ったときも、半分に分解するのに5時間はかかります。アルコールに対処しながら、カフェインにも反応するので、アルコールとカフェインの「合わせ技」は、睡眠を浅くさせてしまうというわけです。
これからは、忘年会やクリスマスパーティー真っ盛りの時期。アルコールが、実際に私たちの脳や体に及ぼす影響やメカニズムがわかれば、お酒ともより賢く楽しく付き合えるかも!?
Kevin Purdy(原文/訳:松岡由希子)